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2012年5月23日水曜日

症例 覚えておきたい稀な頭痛 その1

60台の男性。主訴頭痛。

境界型耐糖能障害程度の既往のみ。
来院10日前より頭痛。頭痛は右前頭部、眼周囲、後頭部のズキズキする様な痛み。
眼の奥も痛む。最初は経過観察していたが、徐々に増悪するために入院3日前に外来受診。
そこではNSAID座薬による鎮痛のみで帰宅した。

その後も徐々に増悪し、我慢できない痛みとなったために再度受診した。
頭痛の性状はこの10日間で変わっていない。程度が増強。
ズキズキは非拍動性。NSAID使用後は軽快するが、切れるとまた増悪。
疼痛時には流涙も軽度あると。主に右目から。
霧視、複視、視野障害の自覚無し。嘔気無し。来院時に悪寒戦慄を認めた。
それまでは37度前半の微熱を認めていた。
また、入院2日前より右鼻の軽度鼻閉感あり。鼻汁無し。

元々頭痛持ちではない。

既往歴は耐糖能障害のみ。薬剤はなし。
喫煙なし。飲酒なし。
Vital はBT38.0度以外は問題無し。
身体所見では、右前額部でKnock pain陽性眼の圧痛無し。
瞳孔左右差無し。眼球運動左右差なし。対座法で視野も正常。
視神経乳頭浮腫なし。眼の血管雑音無し。
他、脳神経系に問題無し。
項部硬直なし。

◯◯を疑い頭部CTをチェック!

頭部CTでは...(注; 本人のものではありません)



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【蝶形骨洞炎】Sphenoid Sinusitis

蝶形骨洞炎は副鼻腔炎全体の2.7%と稀な部位.
 他の副鼻腔炎からの波及からが一般的.
 症状も非特異的であり, 神経合併症を来して初めて診断されることも多い.


頭痛は眼の奥の痛み.
周囲への波及により視神経障害, 髄膜炎, 硬膜下血腫
静脈洞血栓症など呈する症例報告も多数.
 神経症状は蝶形骨洞に接するII, III, IV, V1, V2, VIが障害され得る.
 また, 下垂体障害の報告もある.
蝶形骨洞周囲の解剖の図(ネッターアトラス)

蝶形骨洞の疾患は, 炎症(感染症)と腫瘍浸潤を考える必要がある。
症状では炎症性疾患では頭痛が98%と高頻度である一方, 腫瘍性疾患では76%,
反対に腫瘍性では視野障害が50-60%で認められる。炎症性では12%のみ。

頭痛の部位としては、眼窩後部、後頭葉の疼痛が69%, 顔面痛17%.
膿性鼻汁は10%, 片側性の鼻閉は24%と他の副鼻腔炎と比較して少ない.

(Otolaryngol Clin N Am 2004;37:435-51)

蝶形骨洞炎の起因菌;
 最も多いのはS aureus > Streptococcal spp.
 嫌気性のグラム陰性菌も7%程度で認められる.
 真菌ならばAspergillusが多い. 免疫不全患者では要チェック.
治療は早期で合併症が無ければ抗生剤でOK
 上記細菌をカバーする. CTRX+クリンダマイシンなどが推奨
 髄液, 血液培養, 膿からの培養が判明すればDe-escalationを行い, 3-4週間は治療することが推奨.
 治療開始から48-72時間経過しても症状緩和乏しい場合, 神経症状など合併症出現時は緊急ドレナージの適応. 喉頭ファイバーによるドレナージなど. 耳鼻科コンサルト必要.
(Otolaryngol Clin N Am 2004;37:435-51Ann Acad Med Singapore 2004;33:656-9)


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実際の患者さんではABPC/SBTで治療を開始。
当初はあまり改善なくドレナージか、ということで焦りましたが、問題なく改善。
神経障害の出現もありませんでした。

ほっとくとアカン副鼻腔炎もあるということと、
特異的所見もないため、頭痛では念頭に置かないと見逃す疾患なので注意しましょう。

By 高岸