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2013年3月1日金曜日

血小板の大きさ Mean Platelet Volume (MPV)

血小板減少時に "血小板の大きさ" が解釈に役立つことが多い.
血小板の大きさをMean PLT Volume(MPV)と呼ぶ.
あまり馴染みの無いかもしれないが, 血算の検査機では大体この数字は出ている.
が、実際の検査結果に反映されていないだけで、検査室に聞けば教えてくれるはずです。

Mean Platelet Volume(MPV) 
血小板は産生された直後は大きく, 時間が経てば小さくなる.
従って, 血小板減少を見た時,
MPVが大きければ幼弱血小板が主 ⇒ 血小板消費亢進し, 産生能力は保たれている状態
 (主にDICやHUS, TTP, 消費による低下)
MPVが小さければ古い血小板が主 ⇒ 血小板の産生が低下している状態
 (骨髄抑制)
MPV>7.9は血小板破壊亢進に対する
Sn 82.3%[70.5-90.8] Sp 92.5%[79.6-98.4], LR 11.0
(Int J Lab Hematol 2008;30:408-14) との結果もある.

他の報告でも, 
骨髄疾患(血小板産生低下)では, MPV 7.3, 7.0, 8.1fl.
骨髄疾患(-)(血小板消費亢進)ではMPV 8.6, 8.4, 9.8fl という結果が得られており,
(Int J Lab Hematol 2010;32:498-505) (Int J Lab Hematol 2008;30:214-9) (Clin Lab Haematol 2005;27:370-3)
 → MPVのCutoffは8.2-3位と考える. 

ただし, 肝硬変患者では巨大血小板, PDW(PLT Distribution Width)が拡大するため, MPVはあてにならない. (Folia Haematol Int Mag Klin Morphol Blutforsch 1988;115:719-26)

----------------以下はエビデンス----------------
血小板減少のある473名の解析(Clin Lab Haem 2005;27:370-3)
 PLTの寿命低下による血小板減少群と, 骨髄疾患による血小板低下群でMPVを比較すると,
寿命低下群(消費亢進)のほうがMPVが大きい傾向がある.

MPV値と骨髄疾患のOdds ratioの関連:
MPV Cutoff
骨髄疾患OR
NPV
MPV Cutoff
骨髄疾患OR
PPV
≥11.0
0.06[0.02-0.19]
95%
<11.0
17.20[5.31-55.80]
47%
≥10.5
0.05[0.02-0.13]
95%
<10.5
20.75[7.46-57.72]
50%
≥10.0
0.08[0.04-0.16]
91%
<10.0
11.90[6.19-22.88]
53%
≥9.5
0.09[0.06-0.16]
88%
<9.5
10.70[6.36-17.97]
59%
≥9.0
0.10[0.07-0.16]
84%
<9.0
9.57[6.14-14.91]
64%
≥8.5
0.13[0.09-0.20]
77%
<8.5
7.66[5.06-11.59]
69%
≥8.0
0.12[0.08-0.20]
70%
<8.0
8.10[5.03-13.02]
77%
≥7.5
0.20[0.11-0.20]
64%
<7.5
5.11[2.91-8.95]
74%


血小板減少(<15万/µL)の699名の解析では(Int. Jnl. Lab. Hem. 2010, 32, 498–505)

このStudyでは,
 Cutoff≤8.15で感度67.7%, 特異度65%,
 Cutoff≤6.75で感度51.6%, 特異度53.8%で骨髄異常を示唆するという結果.
 あまりいい結果ではない...

MPVと悪性腫瘍の骨髄浸潤の関係を評価したStudy(Int Jnl Lab Hem 2008;30:214-9)
固形腫瘍の121名(内骨髄浸潤61名)と健常人Control62名においてMPVを評価.
各群のMPVをプロットすると,

担癌患者では, PLT値に関係なく, MPV<7.4は癌の骨髄浸潤を示唆するという結果.
Cut-off
Sn(%)
Sp(%)
MPV<8.0
85.1%
88.3%
MPV<7.4
82.7%
89.6%
MPV<7.2
55.6%
91.8%
Hb<13g/dL
74.1%
85.6%
Hb<12
66.1%
86.0%
Hb<11.5
61.4%
90.0%


意外に知らないけど情報量の多いこのMPVという値.
是非覚えて活用しましょう.