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2014年2月25日火曜日

Vogt-小柳-原田病のReview

Vogt-小柳-原田病, Vogt-Koyanagi-Harada disease, VKH diseaseについて

VKH病
両側性の肉芽腫性ブドウ膜炎と脱毛, 白毛症, 聴覚障害, CNS障害を来す疾患.
アジア人, ヒスパニック, Native American等に多く, 白人と黒人には少ない
 遺伝的な関連があるとされている.
HLA-DR4, HLA-Dw53との関連が強く, 最も関連性が高いのはHLA-DRB1*0405
 VKHはT cellによるメラノサイトに対する自己免疫反応が原因.
 Tyrosinase, tyrosinase関連蛋白が抗原となっている.

女性の方が多く, 30-50歳代に多いが, 全年齢層で生じる.
(Int Ophthalmol Clin 2006;46:111-122)

VKHは4つのphaseに分類される
 Prodromal, Uveitic, Convalescent, Chronic/recurrent phase. 

Prodromal phase; 
 発熱, 頭痛, 悪心, 髄膜刺激症状, めまい, 聴覚障害等, 非特異的な症状より発症する. 
 稀ながら脳神経障害や視神経炎等の局所症状を来たすこともある.
 CSFには単核球有意の細胞数増多を認める.

Uveitic phase
 Prodromal phaseは3-5日持続し, その後Uveitic phaseとなる.
 Blurred vision, 羞明, 眼痛, 両側性肉芽腫性ブドウ膜炎, 脈絡膜炎. 
 滲出性網膜剥離は多発性, 独立性で生じる.(87%)
 視神経は69-87%腫脹し, 充血する

Convalescent phase
 適切な治療により網膜剥離やブドウ膜炎は落ち着く.
 ブドウ膜の腫脹が改善した後には, 脈絡膜のメラノサイトの欠落が残り, “Sunset glow”と呼ばれるオレンジ〜赤色の網膜を眼底所見にて認める.
 また多発性, 独立性の網膜色素脱失部位が認められる.

Recurrent phase
 VKHは再発し, その際に前部ブドウ膜炎を来す事が多い.
 網膜血管炎, 動静脈瘻を生じる事もあり, 視力, 視野障害の原因となる
 炎症の持続により白内障(44%), 緑内障(29%),  CNVM(Choroidal neovascular membrane) 15%, 網膜下線維化(8%)で合併する.
(Int Ophthalmol Clin 2006;46:111-122)(Curr Opin Ophthalmol 2010;21:430–435)

VKHの全身症状
 髄膜, 皮膚, 内耳の障害を来す.
 髄膜炎は眼障害の1-2wk前に生じ, 頭痛と髄膜刺激症状を来す.
 CSFでは単核球有意の細胞増多を認める. 
 脳症も生じる事があり, 意識障害や失語, 局所症状を来す.
 内耳障害では耳鳴, 高音性難聴, めまいを呈する
 皮膚症状はConvalescent stageで起こり, 白斑症, 脱毛, 白毛症が生じる. 顔面, 胸部, 肩, 背部で多い.
 他には乾性角結膜炎を生じ, 一部ではSjogren症候群の基準を満たす

1995-2005年に中国で診断したVKH病 410例の解析
(Ophthalmology 2007;114:606–614)
 2001年診断基準を用いて診断. 273例がComplete VKH syndrome, 76例がincomplete, 61例がprobable.
 男性が52.4%, 女性が47.6%と男女比はほぼ同等.
 発症年齢は35.2歳[9-70], 診断年齢は38歳[11-70]

VKH症候群は家族歴, 全身性疾患との関連性は無し.
初診時の症状は, 
 一過性の視野のぼやけの後に急速に進行する視力障害が99%.
 他にはRed eyes 15.1%, 眼痛 14.9%, 飛蚊症 2.7%.
 両側眼の障害は初診時には77.6%で認められ, 初期には片側性であった患者も, その後 ~3日で18.5%, ~7日で3.7%, ~14日で0.2%で両側の障害となる

眼球外症状は85.1%で認められる.
髄膜症状(悪心, 頭痛, 項部硬直)
52.4%
耳鳴
43.7%
脱毛症
39.8%
白毛症
36.6%
聴覚障害
29.3%
白斑
21.5%
毛髪に触れると異常感覚あり
9.0%


髄膜症状と耳鳴はぶどう膜炎に先行することも, 同時期に出現することもあるが, 白毛, 脱毛, 白斑はぶどう膜炎後に生じることが多い

ぶどう膜炎
同時
ぶどう膜炎
髄膜症状
91
42
82
耳鳴
81
37
61
白毛症
15
0
135
脱毛症
8
0
155
白斑
1
0
87

ぶどう膜炎発症からの期間と所見頻度

B-scan USでは網膜剥離は~2wk群では100%で認められ, 硝子体混濁は認められない.
 2wk以降となると網膜剥離の頻度は低下し,  硝子体混濁は2wk-2m群で26.7%. 2m-群で26.1%

US biomicroscopyでは~2wk群では特に異常無し.
 2wk以降の群では全例でciliary edemaが認められた.

CSFでは細胞数増多を全例で認める.
HLA-DR4は55.1%で陽性(健常人では14.3%)
HLA-DRw53は72.1%で陽性(健常人では38.4%)

それら以外の血液検査には特に異常は認めない.
 ESR亢進は25.4%のみで, CRP上昇も10例のみ.

VKHの診断(Int Ophthalmol Clin 2006;46:111-122)(Curr Opin Ophthalmol 2010;21:430–435)
VKHとの鑑別で重要な疾患
 交感性眼炎 中心性漿液性脈絡膜症
 急性白血病 
 原発性眼内B cellリンパ腫 転移性腫瘍
 傍腫瘍症候群(Uveal melanocytic proliferation)
 Acute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy 
 Multiple evanescent white dot syndrome,  
 ベーチェット病, ライム病, サルコイドーシス, Benign reactive lymphoid hyperplasia

診断クライテリア
眼底所見, エコーでの網膜評価所見 (INTERNATIONAL OPHTHALMOLOGY CLINICS 2012;52:163–172)

(Curr Opin Ophthalmol 2010;21:430–435)

VKHの治療 (Int Ophthalmol Clin 2006;46:111-122)(Curr Opin Ophthalmol 2010;21:430–435)
 治療はステロイド. PSL 1-2mg/dで, 6m程度でTapering.
 重症ブドウ膜炎や神経障害例ではmPSLパルスも考慮すべき.
 経口 vs パルス療法では特に視力予後は変わらない.
 それよりも6ヶ月以上投与することが重要.
 Doseも0.36mg/kg/dでは効果は乏しく, 少なくとも0.75mg/kg/dが4ヶ月以上必要という報告がある.