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2014年5月27日火曜日

尿中Mg. FEMg (Fractional Excretion of Magnesium)

FENa(Fractional Excretion of Na)は有名でよく使用されている指標だが, FEMgはあまり使用されていない. あまり使う頻度も少ないため, 正常値も良く分からない. 使い勝手も良く分からない, ということでまとめてみます.

FEMgの正常値:
 色々なStudyのControl群の数値をチェックしてみると,
 成人例ControlではFEMg 1.4±0.6% (Am J of Kid Dis 1999;33:886-91)
 他には 1.8%[0.5-4] (Magnes Res. 1997 Dec;10(4):315-20)
 小児例(6ヶ月〜10歳)では2.28±1.54% (Saudi J Kidney Dis Transpl 2011;22(3):476-481)

これらより, 成人では1.4-1.8%, 小児では2%前後が正常範囲と考えられる.

低Mg血症での腎性漏出の評価:
低Mg血症患者142例でFEMgを評価したStudyでは,
 Control群では1.8%[0.5-4],
 腎外漏出性低Mg群では 1.4%[0.5-2.7]
 腎性漏出性低Mg群では 15%[4-48].

低Mg血症において, FEMg>4%は腎性漏出を示唆する所見といえる. 
(Magnes Res. 1997 Dec;10(4):315-20.)

腎外漏出性低Mg血症患者と健常Control群のFEMgは大した違いが無いことに注目.
カリウムと同様, ナトリウムと異なりその電解質が低値となっても腎臓での再吸収には限度があり, 常に一定量は排出され続けてしまう電解質といえる.
(Intake不足で低値となる理由)

腎障害の評価としてのFEMg
各腎症と, 尿中排泄率を比較 (Am J of Kid Dis 1999;33:886-91)
Group 1
MesP-NS + 尿細管, 間質正常
72
Group 3
FSGS(腎機能は>50%維持)
27
Group 2
MesP-NS + 尿細管, 間質線維化
13
Group 4
FSGS(腎機能は>50%障害)
17
MesP-NS;Mesangial proliferative nephrosis, FSGS; Focal segmental glomerulosclerosis
利尿薬を中止, 食事を合わせ, 10時間蓄尿し, 測定
%(SD) p
FEUA
FENa
FECa
FEPO4
FEMg
正常値
10.9(9)
0.48(0.1)
0.25(0.2)
14(10)
1.4(0.6)
Group 1
9.8(5)
0.5(0.5)
0.3(0.3)
14.5(13)
1.3(0.5)
Group 2
12.4(5) NS
0.8(0.5) NS
0.3(0.2) NS
18(20) NS
3.3(0.9) <0.001
Group 3
16.5(8) NS
1.2(0.7) NS
0.9(0.8) <0.001
17(12) NS
4.1(1) <0.05
Group 4
37.7(18) <0.001
4.8(3) <0.001
2.1(1) <0.001
47(24) <0.001
12(6) <0.001
尿細管, 間質正常群ではContorl群と各電解質排出率は変わらず.
尿細管, 間質の障害が加わると, 先ずFEMgが上昇する.
FSGSではFECa, FEMgが上昇し, 50%以上の腎機能障害があると全ての電解質排泄が増加.

尿細管や間質障害に伴い,
Mg再吸収 ⇒ Ca ⇒ PO4, Na, UA再吸収が障害される可能性がある.

小児 (6m-10y)におけるControlとAKI患者の尿, 血清電解質を評価したStudy

AKI
Control
P
尿中Mg
14.57(6.75)
5.54(2.83)
<0.001
血清Mg
2.24(0.44)
1.98(0.65)
0.164
FEMg
9.49(7.76)
2.28(1.54)
<0.001
尿中Na
124.9(59.8)
117.3(70.39)
0.9
血清Na
142(2.24)
141(2.03)
0.38
FENa
1.035(0.65)
0.56(0.28)
0.005
GFR
81.8(13.55)
109.75(9.03)
<0.001
AKIではFENa, FEMgが優位に上昇する.
FEMgの上昇のほうがより顕著といえる(Saudi J Kidney Dis Transpl 2011;22(3):476-481)

ということで,
実はFEMgはFENaよりも鋭敏に腎障害を検出可能な指標かもしれない.
頭の片隅に入れておきましょう. 出す機会は無いかもしれませんが.