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2014年11月24日月曜日

Microscopic colitis (2014/11/24 UpDate)

Microscopic colitis: Collagenous colitis, Lymphocytic colitis
Aliment Pharmacol Ther 2006;23:1525-34
J Clin Gastroenterol 2009;43:293-6

慢性非血性下痢, 腹痛, 悪心を呈する疾患
 画像上, 血液検査上, 内視鏡検査では明らかな所見無し
 大腸の生検にて異常を認め, 組織型に応じて
 Collagenous Colitis
 Lymphocytic Colitis に分類される.

近年, 中年~高齢患者の慢性下痢の原因として多く報告されており, 実は多い疾患の可能性がある.
CCもLCも発症様式は同じであり, 組織検査でしか鑑別は不可能

大腸癌との因果関係は認められていない

MCの頻度は8.6/100 000pt-yr (J Clin Gastroenterol 2009;43:293-6)
CCは5.5/100 000pt-yr, LC 3.1/100 000pt-yr
 近年益々報告例が増加しており,
 2002-2004年のCohortだと, MCは10.0/100 000pt-yr(CC 4.6, LC 5.4)
 平均診断年齢は68yr[24-95], 加齢と共にRiskは増加する(>65yrでRR 5.6[4.0-7.7])
 女性に多く, CC RR 3.44[2.07-5.97], LC RR 6.29[3.21-13.74]

ミネソタにおけるCohort study. (Gut 2007;56:504–508)
Microscopic colitisは年々頻度が増加(発見されるようになっている)
Lymphocytic colitisの方が多い.

A; Microscopic colitis 
B; Collagenous colitis 
C; Lymphocytic colitis 
高齢者程高頻度となる. 女性の方が若干多いが, ≥80yでは性差はない.

Cohort studyにおける頻度のまとめ (Inflamm Bowel Dis 2013;19:23872393)

Microscopic colitisの原因
原因は不明な部分が多いが, HLAに関与するとの報告(LCの12%にIBDの家族歴あり)
 HLA-DR3-DQ2との関連性も報告あり.
 腸管自体の問題; 上皮内のT cell浸潤, 免疫異常など
 感染症; MC患者では抗Saccharomyces cerevisiae抗体を有する率が高い
 胆汁; 胆汁の再吸収障害が, CCの27-44%, LCの9-60%で認められる
 自己免疫疾患; 甲状腺異常, Coeliac disease, DM, 関節炎の合併例が多い
 一酸化窒素; 腸管上皮のNO濃度が高い?
 臓器移植後; 腎, 膵臓, 肝移植後に合併する報告がある.  頻度は8.8/1000ptと高頻度.
(Aliment Pharmacol Ther 2006;23:1525-34)

薬剤; 様々な薬剤の報告がある(Aliment Pharmacol Ther 2005;22:277-84)
Risk Drug
High Acarbose(グルコバイ), Aspirin(アスピリン), Lansoprazole(タケプロン), NSAIDs
Ranitidine(
ザンタック), Sertraline(ジェイゾロフト), Ticlopidine(パナルジン)
Intermediate Carbamazepine(テグレトール), Flutamide(オダイン), Lisinopril(ゼストリル)
Modopar(
マドパー), Oxetorone(ノーサートン), Paroxetine(パキシル)
Simvastatin(
リポバス)
Low Cimetidine(タガメット), 金製剤

Microscopic colitisの症状
症状, 発症形式 (MC 163名の解析) (Gut 1996;39:846-51)
突如発症; 42%, 緩徐発症; 58%
経過; 単一エピソードのみが2%, 慢性間欠性が85%, 慢性持続性が13%
症状;
症状

下痢回数

体重減少(6kg[3-20]) 42% =<3 12%
腹痛 41% 4-9 66%
夜間下痢 27% >=10 22%
倦怠感 14%


鼓腸 8%


併存症詳細;
併存症 頻度 併存症 頻度
関節リウマチ 10% Sjogren’s Syn, Psoriasis,
Raynaud’s disease
1.9%
甲状腺疾患 8.6%
Coeliac Disease 8.0%
喘息/アレルギー 6.2% リウマチ性多発筋痛症,
ヘルペス皮膚炎, 変形性脊椎炎
1.2%
糖尿病 5.5%
慢性胃炎 2.5%
Crohn’s Disease 1.9% Sarcoidosis, 脱毛症, SLE
0.6%
潰瘍性大腸炎 0.6%

Microscopic colitisの組織所見 Aliment Pharmacol Ther 2006;23:1525-34
CC;  上皮下のコラーゲン層の肥厚が特徴 (>=10mcm, 通常0-3mcm)
 上皮, 粘膜固有層のリンパ球浸潤を伴う炎症も認める
LC; 上皮内のリンパ球浸潤 (>20IEL/100上皮細胞) (通常は<5IEL/100上皮細胞)
 粘膜個有層の炎症所見が特徴

CCとLCは同じ疾患なのかどうか? (Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 79–90)
Collagenous colitisとLymphocytic colitisの特徴を比較したMeta-analysisでは両者は同じ様な背景, 病状を示す.
組織所見の比較;
 上皮内リンパ球浸潤(IEL)はCCの45%で陽性であり, コラーゲンバンドはLCの16%で陽性.
組織的なオーバーラップがありそう.

症状の比較;
年齢や女性の占める割合, 症状, 薬剤使用状況, 自己免疫性疾患の合併率も双方で同じ様な分布.

MCの治療
治療薬として確立されているものはない.
目標は症状の寛解維持とQOLの向上.
 まず行うことは薬剤性の評価と食生活の評価.
 食生活ではカフェインの過多やアルコール, 下痢の原因となるものを評価
 また禁煙指導も重要となる

止痢薬: Loperamide(ロペミン®), Cholestyramine(クエストラン®)

 RCTはないが, 軽症のMCでは第一選択となる.
 対症療法であり, 組織的な改善にはつながらない. 中止で症状は増悪する.

Budesonide; ステロイド剤, 国内は吸入薬のみ
 現時点では最も信頼のおける薬剤
 症状, QOLの改善効果がPlacebo-controled RCTにて証明
(Gastroenterology 2002;122:20-5, 2002;123:978-84)(Gut 2003;52:248-51)
 臨床的反応 OR 12.32[5.53-27.46]
 臨床的反応の維持 OR 8.82[3.19-24.37], NNT 2
(Am J Gastroenterol 2009;104:235-41)
 投薬終了にて2wk程度で再発を認める. Taperingの重要性が指摘
Annals of Gastroenterology (2011) 24, 253-262 

Bismuth subsalicylate; サリチル酸ビスマス(整腸剤)
 小規模Studyで効果は見込める結果(N=14). ただし副作用多い薬剤

Prednisolone; Budesonideよりも効果は劣り, 副作用は多いため,
 あまり使用されてはいない. Studyも皆無.

Probiotics; 小規模RCTでは効果は認めなかった(N=29)

Aminosalicylate: Sulfasalazine, Mesalazine: 
 64例のMC症例をMesalazine 2.4g/d vs Mesalazine + Cholestyramine 4g/dに割り付け比較したStudyでは, 両群とも6ヶ月後には85%, 91%で寛解を認めた. (J Gastroenterol Hepatol 2007;22:809-814)

MC患者 92例(下痢≥4/d)を対象としたDB−RCT. Gastroenterology 2014;146:1222–1230 
 Budesonide 9mg/d群 vs Mesalamine 3g/d群 vs Placeboに割り付け, 8wk継続
 臨床的寛解(排便回数≤3回/d)達成率を比較.
 8wk時点で寛解となればその後Drug−freeで16wkフォロー.

アウトカム:
 8wk時点での寛解はBudesonideで良好であるがMesalamineとPlaceboは有意差なし.

MCの治療アルゴリズム Clinical and Experimental Gastroenterology 2014:7 273–284 


MCの予後
 10yrのフォローにて, 23.4%で慢性下痢が持続.
 20%でいったんは寛解認められたが, 再度下痢が出現している.