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2014年6月23日月曜日

副腎不全②: 症状, 検査, 治療

副腎不全 (Adrenal Insufficiency)②: 症状, 検査, 治療

副腎不全①: 原因

副腎不全の症状

原発性副腎不全99例, 二次性副腎不全117例の解析
(Am J Med Sci 2010;339(6):525–531)
症状 PAI SAI
倦怠感, 意欲低下 84% 64%
体重減少 66% 30%
性欲減退 39% 47%
低血圧 55% 32%
食欲低下 53% 29%
頭痛 32% 45%
悪心 49% 24%
皮膚乾燥 34% 37%
腋毛, 陰毛減少 24% 45%
四肢の疼痛 36% 28%
嘔吐 44% 21%
皮膚蒼白 15% 37%
色素沈着 41% 0
Salt craving 38% 0
胃痛 23% 5%
下痢 23% 6%
非特異的症状が多いが, 原発性と二次性の鑑別に最も有用なのは, 色素沈着とSalt craving.
どちらかがあればPAIと言える.
Salt cravingは “塩分渇望”  塩分を特にほしがる, 味付けが特に濃くなるような病歴.
副腎不全患者では仕事状況の変化も大事な情報

全体 PAI SAI
仕事の変化なし 63% 72% 55%
仕事を退職 25% 14% 33%
転職 4% 3% 4%
仕事シフトを変える 3% 4% 2%
仕事時間を減らす 4% 5% 3%
その他 3% 2% 3%
(Am J Med Sci 2010;339(6):525–531)
副腎不全では1/4で仕事を退職している.
 特に2次性では退職率が高い.

先天性Addison病患者の症状頻度 (日内雑誌 2008;97:16)
症状
頻度
症状
頻度
皮膚色素沈着
93.3%
チアノーゼ
20.0%
食欲不振
64.1%
骨年齢遅延
15.4%
脱力疲労
51.6%
発熱
15.2%
脱水症状
51.4%
低身長
11.8%
体重増加不良
48.5%
精神運動発達遅滞
10.0%
嘔吐
47.4%
下痢
9.4%
哺乳力低下
45.9%
ミオパチー
5.6%
ショック
21.6%
(日内雑誌 2008;97:16)

日本国内のデータ (Addison病の症状頻度) (Internal Medicine 1994;33:602-6)
症状



皮膚の色素沈着 77-90% 体重減少 55-63%
口腔内色素沈着 71-84% 起立性低血圧 28-50%
疲れやすい 77-82% 低血圧 27-91%
消化管症状 74% 皮膚乾燥 37-42%
 食欲低下 58-65% 寒冷不耐 26-30%
 悪心嘔吐 34-46% Salt craving 11-24%
 便秘 15-16% 低血糖 16-20%
 下痢 13-16% 頭痛 18-24%
 腹痛 12-20% 精神症状 16%
性機能症状

低体温 11-15%
 月経不順 25-60% 多飲 3-9%
 早期閉経 24-30% 異常行動 6-7%
 脇毛の低下 29-39% 耳介軟骨の石灰化 2-4%
 性欲低下 30%


検査所見

Na血症 38-51%
ESR亢進 45-48%
貧血 30-40%
好酸球増多 29-34%
K血症 25-32%
低血糖 14-23%
Ly上昇 22-23%
Chol血症 22-25%

症状のまとめ (Lancet 2014; 383: 2152–67)


副腎不全の検査
副腎機能試験のまとめ (JAMA 2005;294:2481-8)
Test
Non-stimulated
IIT
Metyrapone
CRH
ACTH
LD ACTH
刺激
なし
Insulin DIV
0.1-0.15IU/kg
Metyrapone
30mg/kg 
深夜にPO
Ovine CRH
1mcg/kg DIV
1-24 ACTH
250mcg IV
1-24 ACTH
1mcg IV
採血timing
早朝6-8AM
30,45,60,90min
翌朝8AM
15, 30, 60min
30 or 60min
30min
測定
Cortisol, ACTH
Cortisol, 血糖
Cortisol,
11-deoxycortisol
Cortisol
Cortisol
Cortisol
Cutoff
(
正常反応)
Cortisol
>18mcg/dL; 
正常
< 3mcg/dL; 
抑制
Glu <40mg/dL,
Cortisol >18,
Cortisol <5,
11-deoxycortisol
  > 7mcg/dL
Cortisol  >18.5
Cortisol > 18
Cortisol >18
その他
ACTH
Primary,
Secondary
を評価
Insulin tolerance
GH
も同時に
評価可能
Max 3000mgまで
個人差あるが,
<15
は異常


Insuline Infusion Testは>60yr, 痙攣の既往(+), 心血管疾患の既往(+)には×
Methyraponeは11-deoxycortisolを阻害 ⇒ Cortisolを低下 ⇒ ACTH上昇
翌朝の採血にて, 通常Cortisol↓, 11-deoxycortisol↑となる
Low-Dose ACTH testは通常のACTH testと同等のSn, Spを示す(ACTH製剤のVitalが250mcgであったことからACTH testの投与量が決まった)

早朝コルチゾール(Non-stimulated cortisol) 早朝6-8 AMの血中Cortisol, ACTHを測定
 患者の仕事, ライフスタイルを注意深く聞いておかないと,Cortisol circadian rhythmが狂っている可能性があり注意.
 Cutoff; Cortisol >18mcg/dLならば正常, < 3-6mcg/dLはAIを示唆
 ACTHの値はPrimary or Secondaryの鑑別となる
 低Alb <2.5g/LではCortisol結合蛋白も減少するため, 見た目低値を示す
 Cortisol 3.1-17.9mcg/dLのグレーゾーンならば刺激試験を行う

193名の副腎不全疑い患者(内60名が副腎不全)において, 夜間絶食後, 8-9AMに測定した早朝Cortisolを評価. J Clin Endocrinol Metab 83: 2350 –2354, 1998
 <4.1 µg/dLでは特異度100%, 感度36%で副腎不全を示唆.
 >16.5 µg/dLでは感度100%で副腎不全を除外可能.
 4.1-16.5µg/dLであればACTH負荷試験を考慮する.

ランダムコルチゾール (Ann Clin Biochem 2010; 47: 378–380)
急性非重症患者 166名において, Random cortisol値とRapid ACTH 30分値の関連性を評価
測定タイミングは9AM~12PM 42%, 12PM~3PM 37%, 3PM~6PM 19%, 6PM~9PM 2%.
 Random cortisol >15.2µg/dLならばACTH test 30分値は全員>20µg/dL
 RC <5.1µg/dLならばACTH test 30分値は全員<20µg/dL
 非重症患者では, RC >15.2ならば負荷試験は不要.
 RC <5.1ならば副腎不全の可能性大と言える.

Secondary AIの場合, ACTH testでは除外はできない
Primary, Secondary AI患者に対するACTH testの感度, 特異度を評価したMeta-analysis
(Ann Intern Med 2003;139:194-204)
Primary AIでは, ACTH testはSn 95%, Sp 97.5%,
 LR(+)19.5[19.0-20.0], LR(-) 0.026[0-0.6]と確定, 除外双方に有用.
Secondary AIにおける, 
 250µg ACTH test; 
  Sn 57%[44-71], Sp 95%, LR(+) 11.5[8.7-14.2], LR(-) 0.45[0.30-0.60]
 1µg ACTH test;
  Sn 61.4%[45-78], Sp 95%, LR(+) 12.3[9.0-15.5], LR(-) 0.41[0.24-0.58]
  と, 感度が低く, ACTH test単独では否定はできない

ACTH欠乏発症後4wk以上経過しないとACTH testは意味無し
(J Clin Endocrinol Metab. 2004 Apr;89(4):1712-7.)

Secondary AIにおいて, ACTH負荷試験の感度が低下する理由としては,
 ACTH欠乏状態では副腎皮質の萎縮が生じるため, ACTHへの反応性が低下する.
 しかしながら, 軽度のACTH欠乏状態, 病初期で, 副腎皮質の萎縮が軽度の場合はACTHへの反応性が残存し, 検査感度が低下してしまうため.
 二次性副腎不全において, 副腎萎縮が生じるまでの期間が1-2ヶ月であり, それ以降ならば感度も上昇する可能性が高い.

ちなみに... ACTHはタンパク分解酵素で容易に分解.
 半減期が短く, 迅速に検査できない場合は冷蔵(4度)保存が必要
 室温(25度)で24hr保存で約80%まで低下するとの報告.
 長期保存の際にはさらに冷凍保存を. (TOSOH Research and Technology Review 2010;54:75-81)
 
副腎不全が疑われる患者におけるアルゴリズム(Ann Intern Med 2003;139:194-204)
ACTH testが陰性となった場合. Primaryは否定的と言えるが, Secondaryの可能性は残る.
症状やステロイド投与への反応によりAI疑わしければ, ACTH testが陰性でもInsulin tolerance test, Metyrapone testを行うべき

副腎不全の治療 (JAMA 2005;294:2481-8)
Glucocorticoid補充
Hydrocortisone 10-12.5mg/m2/dならば骨量減少は殆ど認めない
(30mg/d; 朝20mg, 昼10mgといった投与もされる)
副作用を少なくする投与量は一定しておらず, “症状が改善する最小投与量”で維持することが大事

Hydrocortisone
Cortisone Acetate
Prednisone
Prednisolone
Dexamethasone
力価
1
0.8
4
5
25-50
等価用量(mg)
20
25
5
4
0.5
半減期(hr)
8-12
8-12
18-36
18-36
36-54
半減期の短いHydrocortisone(コートリル)を用いるのが一般的だが,
二次性副腎不全で鉱質コルチコイド分泌能が残存している例では鉱質コルチコイド作用がs少ないプレドニンも選択肢となる.

初期投与量はHydrocortisone 15-25mg/d 1日2−3回に分けて
 朝10mg, 昼5mg, 夕5mgといった, 朝多め, 午後少なめが良い (夕のステロイドは不眠の原因)
Mineralcorticoidの補充
 MeneralocorticoidはFludrocortisone(フロリネフ®)のみ
 電解質異常, 起立性低血圧のある患者には適応
 0.05-0.2mg/d, 1回投与. 
 Overdoseでは下肢の浮腫が出現するため, 減量を考慮
 また, 血中レニン活性が低下するため, 定期的なモニタリングを
(Am J Med 2010;123:409-13)

ステロイド補充療法の合併症 
53名のAI患者, 期間10±7yr, 年齢51±14yr (Lancet 2003;361:1881-93)
Symptom
全体(53)
Primary(28)
Secondary(25)
倦怠感
40%
36%
44%
気力喪失感
28%
25%
32%
筋力低下
26%
18%
36%
不眠
20%
14%
28%
筋肉痛
13%
14%
12%
感染症再発
6%
11%
0
悪心
6%
11%
0
Signs
全体(53)
Primary(28)
Secondary(25)
中心性肥満
19%
14%
24%
体重増加
20%
11%
32%
体重減少
2%
4%
0
色素沈着
17%
32%
0
低血圧症
15%
11%
16%
高血圧症
6%
7%
4%
血中Na↑, K↓
9%
13%
4%
血中Na↓, K↑
6%
7%
4%
末梢の浮腫
4%
0
8%