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2014年10月1日水曜日

黄色ブドウ球菌の菌血症と経食道エコーの適応

黄色ブドウ球菌の菌血症と経食道エコーの適応

黄色ブドウ球菌(S aureus)は全菌血症の中の23%を占める原因菌.
 最も死亡リスクが高い原因菌でもあり, 死亡率は30%に及ぶ.
 S aureusのコンタミ率は1.5%のみであり, Riskを考慮し, 血培から生えた場合は即治療の対象となる.

 感染Focusが分かれば迅速に取り除くことが推奨されるが, Focus不明なものも10-40%で認められる.

心内膜炎合併率は60%に及ぶとされるが, これはかなり古いデータ.  経胸壁エコーは臨床的にIEが明らかではない群の20%でIEを診断.
 経食道エコーはTTEで陰性例の19%でIEを診断する.
  >> 原則, S aureus菌血症ではTEEが必須とされている
Lancet Infect Dis 2011;11:208-22

S. aureus菌血症を評価した9 trialsのReview.
 4050例の菌血症例のReview. 
JAMA. 2014;312(13):1330-1341.
 IE評価として経食道エコーを使用するStudyではIEの頻度は14-28%, 経胸壁エコーを使用するStudyでは2-15%の頻度.
 経胸壁エコーのみでは診断率が10%以上低下するように見えるが, これはSelection biasがある可能性に注意 .
S aureus菌血症患者を対象としたRetrospective study. Medicine 2013;92: 182-188 菌血症を以下に分類;
 Complicated; 3日以上の菌血症, 再発例, 二次性
 Device-associated; 心臓内のデバイスあり
 Suspected IE; 心雑音あり, 塞栓症あり
 Uncomplicated; 2日以内の菌血症, 上記のどれにも当てはまらない.

SAB症例は960例で, TEEは177例, TTEを施行したのは321例
エコーによるIE陽性率. 黒; TTE, 斜線; TEE.
 やはり経食道エコー(斜線)のほうがIE診断率が明らかに高いものの, Uncomplicated SABではそもそもIE例は少なく, 両者の評価に よる診断率には大きな差はない.


経食道エコーと経胸壁エコーにおけるIEの 診断能を評価した5 trialsのReviewでは, IEリスクが低い群*では経胸壁のみでもよいとする報告もある. JAMA. 2014;312(13):1330-1341.
低リスク群は以下を満たす群
 心臓内Deviceが無い
 4日以内に再評価した血液培養が陰性
 非透析患者
 S aureusの院内感染例
 感染の播種を認めない
 IEの臨床所見を認めない
これらを満たす例ではTTEのNPV 93-100%
Clinical Infectious Disease 2011;53:1-9

明確に適応を決められるわけではないが, 今後のデータが集まれば適応について推奨が出る可能性はあります.
高齢者や寝たきり患者等, TEEの適応に迷う症例においては判断のヒントとなるのではないでしょうか.