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2015年10月19日月曜日

市中肺炎に対するステロイド治療

以前重症の市中肺炎に対するステロイド投与は治療失敗リスクを減らすとのStudyを紹介した。
詳しくはこちら

患者は≥18歳, PSI class VもしくはmATS criteriaで重症肺炎を満たす, CRP≥15mg/dLを満たす患者群におけるmPSL 0.5g/kg q12時間の投与を36時間から5日間行うレジメ。

アウトカム; 死亡リスクや挿管リスクは有意差がなかったものの, 72−120hでの治療失敗率は有意にmPSLで低い結果. (画像所見増悪, 呼吸不全[P/F <200, RR≥30], shock, 挿管管理, 死亡)
 晩期の治療失敗回避効果はNNT 4-5程度見込める結果であった。
(JAMA. 2015;313(7):677-686.)

さらに重症度に関係のない市中肺炎症例を対象としたステロイドの効果を評価したRCTが(Lancet 2015; 385: 1511–18)より発表
市中肺炎患者 785例を対象としたDB−RCT
・患者は重症度など関係なく, 市中肺炎で入院した>18yの成人.
 ステロイドが必要となる病態, 免疫不全は除外.
PSL 50mg/d 7日間 vs Placeboに割り付け, 比較した.

母集団

入院適応のある市中肺炎患者であり、
・患者はほぼ前例が>60歳の高齢者例
・CAPスコアはそれぞれ43[30−60], 46[29−63]
・PSIスコアは93[63−115], 86[65−110]
・CRPはそれぞれ15.9mg/dL[8.0−24.5], 16.4mg/dL[79.1−25.0]

アウトカム

ステロイドは臨床的改善を早め、約1日間の入院期間の短縮が見込める。

市中肺炎に対するステロイドの効果を評価したRCTのMeta-analysis.
(Ann Intern Med. 2015;163(7):519-528.)
・ステロイド投与は全死亡リスクを軽減させる可能性がある(12 trials, RR 0.67[0.45−1.01], RD 2.8%)
・人工呼吸器リスクも低下させる(RR 0.45[0.26−0.79], RD 5.0%)
・ARDSリスクも低下(RR 0.24[0.10−0.56], RD 6.2%)
・臨床的安定までの期間も有意に短縮する(−1.22日[−2.08~-0.35])
・入院期間も短縮(−1.00日[−1.79~-0.21])

・副作用は高血糖.
 高血糖に対する治療が必要となるリスクが上昇(RR 1.49[1.01−2.19])
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このMetaからは、市中肺炎に対するステロイド投与は
・死亡リスクを約3%ほど低下させる可能性があり
・挿管リスクを5%軽減させ
・ARDSリスクも6%減らし
・入院期間を1日短くする 効果が期待できる.

注意点は母集団は入院が必要な市中肺炎症例であり、大体60歳を超えた高齢者であること.

従って、外来で管理可能な市中肺炎にはそもそも必要なし.
死亡リスクは有意差は実は無く、微妙なライン.
挿管、ARDSリスクは軽減させるため、それらのリスクがある患者では考慮すべき

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また、この市中肺炎に対してステロイド、というマネージメントが一般化してしまった場合、間質性肺炎がマスクされるリスクも懸念されます。
となると、やはりしっかりと適応を考えて、間質性肺炎が考えられる場合は控えるべき。
またグラム染色も行い、確実に市中肺炎、と言える場合に考慮すべきと思います。