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2016年1月12日火曜日

TTP/HUSとDICの鑑別ポイント

1月の京都GIMカンファレンスの症例の1つで,
発熱、意識障害、Labにて血小板減少, 貧血, LDH軽度上昇, 腎不全,,, という症例が提示された.
結局は劇症型肺炎球菌感染症 + SLE(ITP合併)であったが,
例えば自分が救急でこの患者を診察した場合, どうしてもTTPの鑑別が必要になると感じた.
(あまりディスカッションではその点は掘り下げられていなかったが...)

TTPでは早期の血漿交換が治療となり, 血漿交換をしない場合の致命率は90%と予後が悪い.
ところが, このDICなど, 同じような病状を呈する疾患もあるため, 診断が難しいことがある.

何か良い方法はないものか?

調べると1つだけ両者の鑑別をテーマとした論文があった.
(Am J Clin Pathol 2010;133:460-465)

27例のTTP/HUS患者と51例のDIC患者のデータを後ろ向きに比較.
・TTP/HUSは特発性が19例, 出産後が3例, SLEが2例, 薬剤性が1例, 乳癌既往, 膵癌既往がある例がそれぞれ1例.
・両群の基礎データ

両群の血液データの比較.
TTP-HUSではよりPLTが低く, PT, INR, aPTTの延長が少ない.
・FibrinogenやD-dimerは両者で有意差なし.
・LDHも両者で有意差はない.

PLT値, PTによるTTP/HUSとDICの鑑別.
PLT <2万/µLではTTP/HUSに対する特異度が高く,
・PTの延長が5秒未満ならばTTP/HUSに対する感度が高い結果.

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なるほど, DICはCoagulopathyであるため, 血小板低下もそうであるが, 凝固能も大きく障害される.
一方でTTP/HUSは血小板の低下がメインであり, 血小板の低下の割には, 比較的凝固能の障害は軽度という『感覚』がある.

この辺の絶妙な感覚が TTPっぽい、DICっぽいという印象に結び付けられるようになればよいのかもしれない.

で、実際京都GIMの症例のデータは,

Hb 11.7, PLT 2.4万, PT-INR 1.22, APTT 36.9s, D-dimer 5µg/mL
LDH 421, 他割愛.

あれ, PLTの低下の割には, 凝固障害はそこまできつくないぞ。。。?

ということで、背景にITPがあるともうダメですね.

まあ、普通のDICではないな、という感覚は重要かもしれません