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2016年6月15日水曜日

ステロイド局所注射による色素脱失

ステロイドの関節内注射や局所注射後に同部位の色素脱失や皮下組織の萎縮を認めることがある

・30年前の外傷後に右手関節変性, 疼痛を生じTriamcinolone acetonide(ケナログ®) 40mgを関節注射施行.
 その後2ヶ月間かけて徐々に無症候性の色素脱失 +
 注射部の色素脱失と, その周囲に放射状に線状の脱失を認める
 線状の色素脱失はリンパ流に沿っている
(Dermatology Online Journal 18 (5): 11 )

・アキレス腱の疼痛に対してTriamcinolone acetonideを局所注射した後に発症した色素脱失
(Southern Medical Journal 2006;99:1393-1394)

・15日前に足関節にTriamcinolone acetone 20mgを関節注射し, その後色素脱失を認めた症例
 疼痛も異常感覚も認められない.
 線状の色素脱失はリンパ管に沿ったステロイドの移行によるPerilymphatic atrophyと診断.
 同部位周囲の萎縮も認められている.
(Arthritis Rheum. 2013 Dec;65(12):3318. )

ステロイドの局所注射に伴う合併症は色素脱失, 皮下組織の萎縮, 毛細血管拡張がある.
・Triamcinolone acetonide(ケナログ®)は最も色素脱失の報告が多い薬剤であるが, 局所注射によく使用されているため, 報告が多いだけかもしれない.
・色素脱失の機序はステロイドによるメラノサイトの機能低下によるもの.
 単回注射, 複数回双方で生じ, 範囲も程度も注射〜の期間も様々.
 再沈着も認められる. 1ヶ月〜数年の範囲で生じ得る
(Dermatology Online Journal 18 (5): 11 )

アスリートのスポーツ外傷に対してステロイド局所注射を施行した際の合併症頻度を評価したMeta-analysis
・22 RCTs, 3 Cohort studiesにおいて, ステロイド局所注射で治療した983例中149例(15.2%)で合併症あり
・上記のうち疼痛以外の合併症は54例(5.5%)
・疼痛は9.7%, 皮膚萎縮 2.4%, 色素脱失 0.8%, 局所の発赤/熱感 0.7%, 顔面紅潮 0.6%
(Clin J Sport Med 2005;15:370) 

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稀な合併症ながら, 使用する人は押さえておく合併症と言えるでしょう.
生じる可能性を説明すべきであるとしている論文もあります.