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2016年8月11日木曜日

Clubbing. バチ指

Clubbing(バチ状指, バチ指)は爪甲近位部の軟部組織の肥厚する病態
・機序は不明瞭であるが, 肺血管床でトラップされているMegakaryocyte, 血小板の集塊が全身循環に入り, 末梢組織において, Platelet-derived growth factorを産生し, 増生を促す仮説がある.
・肺疾患全般, 心疾患, 悪性腫瘍などで認められる.
(Am Fam Physician 2004;69:1417-24)
(Lung India. 2012 Oct-Dec; 29(4): 354–362.)

Clubbingの定義
(Evidence-based physical diagnosis 3rd, McGee)
・バチ指は, B/A >1.0で定義. 健常人では0.895±0.041
・もしくはWXY >190度. 健常人の角度は180±4.2
・Shamroth signは感度77-87%, 特異度90%, LR+ 8, LR- 0.2でバチ指を示唆する

また, 上記以外にもClubbinにはステージがあり,
初期には爪床の軟化所見などが認められる.
ステージ

Grade 1
爪床が軟化する
Grade 2
爪床と爪郭の角度が160度以上となる
Grade 3
創部が特長的な凸型となる
Grade 4
指先がバチ状型となる
Grade 5
光沢を帯びた爪となり, 爪と接する皮膚に縦報告の線条を認める
(Lung India. 2012 Oct-Dec; 29(4): 354–362.)

Clubbingを認める疾患群 (両側性)
(Lung India. 2012 Oct-Dec; 29(4): 354–362.)


片側性のClubbingを認める疾患群
(Lung India. 2012 Oct-Dec; 29(4): 354–362.)

各疾患におけるClubbingの頻度

両側性のClubbingの頻度
腫瘍性
頻度
気管支, 肺癌
32/111. 非小細胞癌 35%, 小細胞癌 4%
胸膜腫瘍
21例中, 14.3%
リンパ腫
縦隔リンパ腫の6/40(15%)
鼻咽頭癌
転移を認める90例中6(6.7%)
中皮腫
30%, 良性のアスベストーシスでは14%
肺疾患
頻度
嚢胞性線維症
頻度不明
アスベストーシス
診断時, 43.1%で所見あり
過敏性肺臓炎
診断時, 53.7%で所見あり
IPF
診断時, 49.1%で所見あり
AVM
19.4%
肝肺症候群
9/14(64%), HPS非合併の肝硬変では5/66(7.6%)
サルコイドーシス
12.2%
心疾患
頻度
チアノーゼ性心疾患
症例報告レベル

消化管疾患
頻度
炎症性腸疾患
クローン病の37.5%, 潰瘍性大腸炎の12.6%
肝疾患
PBC24, 慢性活動性肝炎の29%, 混合性肝疾患の24%
Celiac sprue
14.3%
若年性結腸ポリポーシス
5例中2例で認めた報告あり
感染症
頻度
結核
16.9%
心内膜炎
「心不全」と同程度の頻度, との記載があるのみ
慢性寄生虫感染
ヒト鞭虫感染で合併した症例報告
住血吸虫症による結腸ポリポーシスの56.5%
HIV
HIV陽性患者の5.8%
AIDS
による肺リンパ過形成症例で合併した報告
内分泌
頻度
甲状腺疾患
甲状腺皮膚症の19.7%
血管
頻度
静脈うっ滞
静脈うっ滞に関連している, という説のみ.
精神症
頻度
下剤濫用
症例報告レベル
その他
頻度
SLE
症例報告レベル
CINCA症候群
CINCAでは “common"な所見であると記載
POEMS症候群
5.1%
CINCA: chronic, infantile, neurologic, cutaneous, and articular
(J Am Acad Dermatol 2005;52:1020-8. )

片側性のClubbingの頻度

頻度は高くないが, 片側のClubbingを認めた場合は, 同側の麻痺がなければ血管病変をチェックする
(J Am Acad Dermatol 2005;52:1020-8. )