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2016年10月21日金曜日

副腎の非機能性腺腫は機能しているかもしれない

副腎偶発腫瘍の大半は非機能性腺腫であるが, 非機能性とはアルドステロンやコルチゾール, アドレナリンの産生がないということで, 未知のホルモンを産生している可能性は否定できない.

非機能腺腫 166例と副腎腫瘍(-) 740例を対象とした後ろ向きCohort study(平均7.7年間フォロー, 3年以上).
(Ann Intern Med. 2016;165:533-542. )
・両者における, 高血圧, 2型糖尿病, 高脂血症, 心血管イベント, 慢性腎疾患リスクを両者で比較した.
・ホルモン産生腫瘍, 未評価例, 下垂体疾患例, ステロイド使用例, 悪性が疑われる症例は除外されている.

両者の基礎データ:

非機能腺腫 244例とコントロール群 1237例
 このうち3年以上フォローされている166例, 740例で比較.

アウトカム

NFAT
Control
RR
高血圧
25.7%
31.3%
0.93[0.55-1.57]
高脂血症
17.2%
14.3%
0.95[0.51-1.78]
糖尿病全体*
27.3%
11.7%
1.87[1.17-2.98]
前糖尿病
20.9%
5.8%
3.19[1.83-5.59]
2型糖尿病
11.1%
6.8%
0.99[0.49-1.98]
CKD
9.9%
8.7%
1.00[0.53-1.89]
心血管イベント
9.4%
8.7%
0.72[0.37-1.39]
*一部患者は評価開始時にすでに前糖尿病(+)であったため, 糖尿病全体は前糖尿病+2型糖尿病ではないことに注意
非機能性腺腫(NFAT)では糖尿病リスクの上昇する.

初期にDM(-)群のフォロー
A: 1mg DEX抑制試験と24h尿中遊離コルチゾールでSubclinical hypercortisolismを除外したNFAT
B: 1mg DEX抑制試験でSubclinical hypercortisolismを除外したNFAT(≤50nmol/L)
C: 24h尿中遊離コルチゾールでSubclinical hypercortisolismを除外したNFAT(<138nmol)
D: NFAT, subclinical hypercortisolism, Control群におけるDM発症率

・Subclinical hypercortisolismではなくても, NFATはDM発症(前糖尿病)のリスクとなり得る.
・Subclinical hypercortisolismはさらにDM発症リスクが高い.

実は非機能性腺腫は耐糖能を低下させるホルモンを分泌している ”機能性”なのかもしれない.