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2017年4月11日火曜日

喀痰の色の臨床的意義は?

膿性喀痰は感染を示唆する所見の1つ.
例えば人工呼吸器管理中の患者で膿性喀痰が増悪すればVAPやVATを考慮するし,
COPD患者で膿性喀痰が増加すれば急性増悪を考慮する.

その色は何か意味があるのか?

急性の咳嗽を主訴に受診した241例において喀痰の色と細菌感染の可能性を評価.
(Scand J Prim Health Care. 2009;27(2):70-3.)
・黄色~緑色喀痰は
 アウトカム
  細菌培養陽性(>106CFU/mL)
  扁平上皮<10/LPF
  白血球>25/LPF に対して
  感度 79%[63-94], 特異度 46%[38-53], LR+ 1.46[1.17-1.85], LR- 0.16[0.13-0.18]であり, なんとも微妙な結果.
 色が付いていても培養陽性を強く示唆するわけでは無いが, 色がついていなければ培養陽性となる可能性は結構下がる.

121例のCOPD急性増悪患者において喀痰の性状と細菌感染の有無を評価.
(CHEST 2000; 117:1638–1645)
・細菌量>107CFU/mLに対して膿性喀痰は感度 94%[85-98], 特異度 60%[45-73]
 LR+ 2.4[1.7-3.3], LR- 0.1[0-0.2]通常の咳嗽群よりも診断に寄与する

喀痰の色と細菌の種類の関係を慢性気管支炎患者群で評価
(Eur Respir J 2012; 39: 1354–1360)
・4003例の喀痰検体のうち, 培養陽性例が1898(46.4%)
緑色喀痰では58.9%が培養陽性, 黄色喀痰では45.5%と高い.
 鉄サビ色喀痰では39%, 白色喀痰では18%
喀痰の色と検出菌の関係

黄色喀痰
緑色喀痰
白色喀痰
鉄サビ色
H. influenzae
14.1%
20.0%
10.6%
5.9%
S. pneumoniae
7.4%
9.5%
12.4%
2.5%
Moraxella catarrhalis
7.3%
11.2%
2.3%
4.4%
H. parainflueinzae
5.8%
9.2%
2.5%
5.3%
S. aureus
3.4%
5.4%
1.7%
5.3%
K. pneuoniae
3.9%
3.1%
0.8%
1.8%
P. aeruginosa
2.4%
3.1%
2.5%
1.8%
Haemophilus spp.
1.4%
2.4%
0.3%
0.0
陰性
54.5%
41.1%
81.6%
61.1%

 特に色で鑑別できるものでもない.
「肺炎球菌性肺炎に典型的な鉄サビ色」と言われているものの, そんなことはなく,
「緑」膿菌でも緑色の喀痰になるわけでもない.
というトリビア