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2017年7月20日木曜日

コレステロール塞栓症

コレステロール塞栓症: Cholesterol Embolisation Syndrome(CES)
(Circulation 2010;122:631-41)(Current Opinion in Cardiology 2011, 26:472 – 479)
近位部血管壁の動脈硬化plaqueが末梢に詰まる病態.
・閉塞による虚血 + 塞栓子(異物)による炎症が主な病態.
通常100-200µmの小動脈にコレステロール血栓が詰まる.
・A to Aの塞栓症と異なり, 細かい栓子が多数に飛ぶことが多く, Shower emboliを認める.
  A to Aでは巨大血栓が飛ぶため, 虚血症状が強い.
・Plaqueは線維皮膜に被われたコレステロール, Mφを含む組織.
皮膜の破裂にて急激に血栓形成コレステロール結晶が遊離する.

Plaqueの浸食の程度で塞栓症のriskも変化.
・中等度浸食されたPlaqueが大動脈にある場合, 塞栓症は1.3%,
 一方, 重度浸食されたPlaqueならばrisk12.3%まで増加する.
最もPlaqueを形成しやすい部位は腹部大動脈~腸骨A, 大腿A.
 従って下肢の塞栓症が多い.
鎖骨下AでのPlaque形成は少なく, 上肢の塞栓症は少ない.
腹部大動脈瘤(+)患者では15.3±15moのフォローで,  2.9%がコレステロール塞栓症を併発.(J Vasc Surg 2004;40:424-9)

Plaqueの評価はTEE, CT, MRIで可能.
・上行大動脈の≥4mmPlaqueは脳梗塞のRisk Factorとなる.
生検では, 針状の結晶と, 周囲のMφを認める.

心カテや血管手術におけるコレステロール塞栓症合併率
・日本国内で行われた1786例のLeft-heart catheterizationの内25例でコレステロール塞栓症が合併(1.4%). その内, 皮膚症は0.67%, 腎障害 0.90%, 両方が0.17%.
大腿動脈, 橈骨動脈アプローチで特に差は無し.(J Am Coll Cardiol 2003;42:211-6)
・PCIではRiskは低く, 0.6%との報告がある
心臓外科手術では高Riskであり冠動脈手術で26.1%, 弁手術では8.9%にコレステロール塞栓合併.
腹部大動脈造影では2.9%で合併.
・AAA置換術後では77%でコレステロール塞栓を生じ得る.
・Stent graftによるAAA治療では, コレステロール塞栓症状の改善を見込める (J Vasc Surg 2004;40:424-9)



CESの症状
CESでは微小血栓が全身に播種することで様々な症状, 所見を呈する.
・炎症反応: 発熱, 悪寒, 体重減少, 食欲低下, 筋肉痛などの非特異的症状
・検査では血小板減少や白血球増多, ESR亢進, CRP上昇, 補体低下などが認められる.
好酸球増多は~80%で認められ, 6-18%程度.
 発症初期で多い. 機序は不明.

高齢者の腎不全では6.9%がコレステロール塞栓由来
・≥60yrの急性腎不全患者259名の腎生検では,  6.9%でコレステロール塞栓を認めた. (Am J Kidney Dis. 2000;35:433– 447. )
コレステロール塞栓症の50%で腎への塞栓(+)あり, Cre上昇(83%)と蛋白尿(54%)認める

消化管のコレステロール塞栓は18.6-48%で認める.
・粘膜障害, 潰瘍形成による慢性出血偽ポリープ形成, 潰瘍による急性出血パターンがある.

皮膚は35-96%で塞栓を認める部位.
・下肢の皮膚に多く, 体幹, 上肢には少ない.

Livedo reticularis
49%
Ulceration
17%
gangrene
35%
Nodules
10%
Cyanosis
28%
Purpura
9%
(Arch Dermatol. 1986;122:1194–1199. )

中枢病変
・多発性の脳梗塞を呈する.
塞栓による脳梗塞では神経局所症状を呈することが多いが, CESによる中枢病変では記憶障害や昏迷などを呈することが多い.
上行大動脈のプラーク厚が4mm以上あると脳梗塞, 塞栓のリスク因子となる.
(Curr Atheroscler Rep (2013) 15:315 )

臓器傷害のまとめ
(Int. J. Mol. Sci. 2017, 18, 1120 )

CESの診断
Hypereosinophiliaは約80%で認められる.
・発症初期数日のみ認める場合が多く6-18%程度の上昇. 程度, 期間は様々.
 手技前後のEoを比較し, 上昇していれば有意ととらえても良い
・機序は不明だが, サイトカインの影響と考えられている.

特異的な検査所見は無く, 臨床所見による診断が殆ど.
・発症のトリガー(カテ, 侵襲), 所見(CNS, , 皮膚)Point.
確定診断は生検によるコレステロール結晶の検出.